インジェクターの役割と種類
1970年代までのガソリンエンジン車は、キャブレターで混合気をエンジン内の負圧で受動的にエンジンのシリンダー内部に送る技術が長きに渡り担ってきました。そして1980年代になると技術の進歩により混合気をシリンダー内部に充填することを電気的にコンピュータ制御をして、能動的にシリンダー内部に混合気を送るという技術へと進化しました。そして現代のクルマのほぼすべてのガソリン車でインジェクションが採用されています。
この革新的なインジェクションの技術は、自動車技術の大きな革命のひとつであると言って過言ではありません。
その理由は、従来のキャブレターでは、エンジンから発生する負圧で燃料を吸い上げエンジンのシリンダー内部に供給する仕組みになっています。しかしインジェクションでは、各気筒にもうけられたインジェクターが各センサーの情報より導き出されたその時に最適な燃料を空気と混合し、それを能動的にシリンダー内部に充填させることができるため、非常に安定したエンジン動作を実現し、燃費の向上、パワーアップ、有害物質排出の低減することができるようになったわけです。
そして現在では、ポート噴射型インジェクターからさらに進化した直噴インジェクターというものが採用されており、各気筒ごとに独立した制御で直接コンピュータからの最適なエンジン状態でクルマを走行させるための信号により能動的かつ緻密なエンジン制御ができるようになりました。
それにより従来のポート噴射型インジェクターより少ない燃料で効率的にエンジンパワーを発生させることができます。
日本で発売されているBMWガソリン車では、N13 N20 B48 N54 S63 S55 S63あたりエンジン形式のものより直噴インジェクターが搭載され、以降現在にた至るまでガソリン直噴エンジンが主流となっています。
一見、直噴エンジンは、いい事ずくめに聞こえますが、実はデメリットや課題が存在することもの事実です。
それでは、直噴インジェクション技術では、どのような問題があるのでしょうか?
直噴インジェクターの課題とメンテナンス
ここで直噴インジェクターのデメリットをここで考えてみます。
- 構造が複雑なので故障リスクがポート噴射型より高い
- インジェクター自体に噴射機能があるので部品単価が高い
- シリンダー内部にインジェクターがあるので汚れやすい
これだけ見ると「故障したときに修理代が少しかかりそうだなぁ」程度に思うかもしれません。
しかしこれらのトラブルが複合的に発生した場合は、どうでしょうか?
ひとつのケースとして
インジェクターが汚れる
→ 燃料の噴射が少なくなる
→ 混合気が希薄状態になる
→ 異常燃焼が発生する
→ エンジンブロー!!!
エンジンブローに至るまでの前にECUの制御がはいりますので、このケースはあくまでの最悪のシナリオです。しかしこの状態に陥る可能性は、従来のポート噴射型インジェクターよりも高い確率で発生します。その一番の原因が「インジェクターが汚れやすい」ということなのです。
インジェクター汚れの定期メンテナンスとして有名な商品としてWAKO’S フューエルワンがあります。
発売からアップデートを重ね、今では燃料系洗浄の添加剤として最も信頼のおける商品となっています。
直噴インジェクターの過去のトラブルの事象では、1990年代に鳴り物入りで登場した、M社とT社の直噴エンジンがありましたが、上記の理由により発売してしばらくしてから、エンジンに関する問題が時限爆弾のように多く発生しました。なぜ、時限爆弾かというとこの問題が発生する状態になるまで数年または、数万キロ走行の時間がかかるからです。
そのため、両社は状況は一変して対応に追われ、M社は不具合対応の後にこの技術から撤退、T社は、販売された膨大な車両の対応と再度の研究開発が必要になるという大きな課題を残すこととなりました。
このようなことがあり、現在ではこの問題について他社も反面教師とばかりに開発の見直しをして、以前ほど発生頻度は少なくなりましたが、根本的問題である「インジェクターが汚れやすい」ということについては、現在でも課題として残っています。
しかしながら予防策として、直噴インジェクターのメンテナンスを事前にユーザー側で行っていれば最悪のシナリオに陥る可能性は格段に低下しすので、インジェクターの汚れを気にしたこのがない方は自身のクルマの定期メンテナンスメニューに入れておくと安心です。